Claude Codeで13話の連載小説を書いている
「AIに小説を書かせる」という話ではない。Claude Codeと一緒に、リサーチ・設計・執筆・デプロイまでを一つのセッションで完結させながら、連載小説を書き進めている話だ。
現在4話まで公開している。タイトルは「ASI時代」。自社の実在するサービスを各話に登場させ、それが人物の人生をどう変えるかを描くオムニバス短編集だ。
なぜClaude Codeで書くのか
小説執筆にClaude Codeを使う理由は一つ:リサーチの精度が話の質を決めるから。
第1話の執筆で、登場させるサービス(Airレジのアドオン)をWebFetchで調べたとき、自分の思い込みが根本から崩れた。「POSレジそのものだろう」と思っていたものが、実際には「既存レジへの通知アドオン」だった。それが判明したことで、話の仕組み全体を作り直した。
フィクションにリアリティを与えるのは「本物の細部」だ。その細部を素早く正確に取ってくる能力が、Claude Codeには備わっている。
ワークフロー
1. 執筆前リサーチ(WebFetch)
各話を書き始める前に、登場させるサービスのサイトをWebFetchで読む。
- 機能・料金・ターゲット・実際の使われ方
- 現実世界の類似事例や業界データ
- 「この機能が話のどこで機能するか」を設計してから書き始める
書く前の確認: 「そのサービスがなかったら、この話は成立するか?」
これが成立してしまうなら、サービスの使い方を設計し直す。
2. 文体ガイドをmemoryに保存
セッションをまたいでも文体・トーンを一貫させるため、執筆上の「決まりごと」をすべてmemoryファイルに書き出している。
memory/novel-writing-style-asi-era.md
保存内容:
- 視点・時制(三人称・過去形)
- 感情の出し方(行動・物・空間で表す。直接書かない)
- 構造パターン(冒頭/中盤/結末の形)
- 会話の書き方
- 禁止事項(感動的な演説、泣く・抱き合う等の表現)
次のセッションで「前回の話+このmemory」を読んでから書き始めることで、同じ作家が書いたような統一感を保てる。
3. 決まりごとで設計する
執筆の方針として6つの「決まりごと」を定めている。
決まりごと① — サービスの機能がプロットを動かすこと
サービスは「舞台」ではなく「道具」。サービスの通知や出力が主人公の行動を変える、という設計が必須。
決まりごと② — 他のユーザーを1〜2行入れる
主人公だけが使っているとサービスが「作り話っぽく」なる。脇役が全く違う文脈で同じサービスを使っている一文を入れると、世界に厚みが出る。
決まりごと③ — 冒頭一文を先に決める
本文を書く前に冒頭一文を確定させる。Noteは最初の3行で読者が離脱するかどうか決まる。
決まりごと④ — 執筆前にサービスをリサーチする(①と連動)
決まりごと⑤ — 第2章からトーンを変える
第1章(ep01〜04)は「ほんの少し変わった」で終わる。第2章(ep05〜)は「止まった」で終わる。同じ着地を繰り返すと読者が飽きる。
決まりごと⑥ — 繋がりの仕掛けをリストで管理する
通読した読者だけが気づく、話をまたいだ繋がりを仕込む。後から追加すると不自然になるので、今から設計して管理する。
4. HTMLファイルとして書いてデプロイ
完成した話はPHPファイルとしてVPSに直接デプロイする。
apps/asi-mothership/novel/ep04/index.php
↓
scp → VPS /var/www/asi.co.jp/mothership/novel/ep04/
php -l で構文チェック → scp → HTTP 200確認、まで一つのセッションで完結する。
リライトの具体例:「残り38日」
第3話の元の登録シーンはこうだった。
「六月の終わり、編集者にすすめられて、玲奈は開示請求.JPに登録した。手続きは拍子抜けするほど簡単だった。」
サービスがあるだけで、プロットを動かしていない。
リライト後:
「六月のある深夜、玲奈はまた画面の前にいた。(中略)フォームの横に一行だけ表示があった。「投稿ログ保存期限まで:残り38日」。三十八日。玲奈は、その数字を見た。それまで『そのうち』の棚に積んできたことが、初めて具体的な期限をもった。」
サービスのUI表示(保全期限)が、主人公が「今夜やる」と決めた理由になった。これが「決まりごと①」の実践だ。
現在の公開状況
| 話 | 年 | サービス | 文字数 |
|---|---|---|---|
| 第1話 レジの向こう側 | 2025 | Registep | 4,800字 |
| 第2話 プロンプターという仕事(だった) | 2027 | Prompters求人 | 4,000字 |
| 第3話 あなたの言葉の値段 | 2028 | 開示請求.JP | 4,400字 |
| 第4話 顧問、という名の晩年 | 2029 | 顧問制度.com | 3,700字 |
第5話以降は「フィジカルAIが普及した世界(2033〜2038年)」。主人公ごとにサービスが変わり、世界観が少しずつ変化していく。
Claude Codeで小説を書くのは、「AIに文章を生成させる」とは違う。リサーチ・設計・記述・デプロイを、一つの思考の流れとして扱えることが強みだ。人間が「何を書くか」を決め、Claude Codeが「それを正確に形にする」ための道具として機能する。その分業が、今のところうまく機能している。